快楽思考回路

おもしろさについて考えます。

実績機能について

「最近はどこのプラットフォームも実績機能が搭載されているし、やっぱり今時の流行りだよね!」
「実績がたくさんあればずっと飽きずにプレイできるし、もっともっと楽しんでもらえるはずだ!」
「よーし、自分のゲームにも実績機能を入れてみるぞ!!」

ちょっと待った。
その実績、本当に必要ですか?

とりあえず実績の定義から

分かってる人は読まなくてもいいです。

  • プレイヤーに対して、 ゲーム内における短期的な目標 (実績)をたくさん提示する仕組み
  • 目標を達成する=「実績を解除する」と表現
  • 現在の実績状況が一目で見れることが多い
    • 解除した実績一覧とか
    • 未達成の実績の解除条件とか
    • 実績の解除率とか

f:id:noraunagi:20170411234437p:plain ↑ぼくのPortalの実績ページ。普通にクリアする中で5個解除できた。あと10個残ってるのでクリア後もまだまだ遊べる…かも。

なんで実績が必要なの?

ゲーム開発者が実績機能を導入しようと思う理由(つまり実績のメリット)は、だいたいこんな感じでしょう。

  • 短期的な目標をたくさん提示することで、末永く飽きずに楽しんでほしいから?
  • 普通のプレイではやらないような実績を用意することで、また一味違ったプレイ感を味合わせたいから?
  • 単純に、実績が埋まっていくのを見るのを楽しんでほしいから?

意味不明なんで、一言でまとめると、

もっと長く遊ばせるため ですね。

そんなに長く遊びたいですか

実績機能がXBoxに搭載されてから早11年。実績のいい面と共に、悪影響の面もたくさん語られてきました。

その中で一番大きな点が 「実績解除が義務になってしまってダルい」 というもの。

  • クリアしたけど実績はたくさん残ってる!まだまだやることがある!遊べる!
  • でも、クリアし終わってストーリー的に進展もないのに、まだこのゲームを続けるの…?
  • でもでも、実績が残ってるってことは「ちゃんとクリアした」という感じがしないので、仕方なく続けてしまう
  • でもでもでも、そもそもこのゲームの体験に飽き始めてるし、もっと他のゲームやりたい…
  • でもでもでもでも、実績コンプしないとなんだか気持ち悪い…

という感じで、半ば義務感を背負いながらゲームをプレイしてしまうという問題が発生します。

そもそもゲームの評価とは

そりゃ「どんだけ楽しいか」に決まってるんですが。

でもさっき言ったように、「最初は楽しかったけど、クリアしてからもすでに飽きた(もう楽しくない)ゲームを義務的にプレイしてしまう」パターンもあるんです。

そういうケースも考えると、僕はゲームの評価は「そのゲームをプレイするのをやめた段階で、どれだけ満足感があるか」かなと思います。

例えば100時間プレイできるゲームがあるとして、最初の10時間は最高に面白かったとして、残りの90時間がクソゲーならそれはクソゲーですよね。
面白い時間が最初の90時間だとしても、最後の10時間がクソゲーなら、すごい嫌な気分でゲームを終えてしまい、その評価は最初の90時間に対して相当低いものになるでしょう。

例えば1時間で完全クリアするゲームがあるとして、その面白さが前のゲームと同じぐらいだとしたら?
楽しい時間はたった1時間でも、ずっといいゲームだったと思うはずです。
「楽しさ」は「時間」ではなく「 タイミング 」がとても大事なのです。

例えば100時間プレイできるゲームがあるとして、最後の10時間は超絶面白いけど、最初の90時間がクソゲーなら?
終わり良しは全て良し、と言いたいところですが、その場合は「最後までプレイできた人にとっては神ゲーだけど、ほとんどの人はクソゲーのまま途中で挫折する」が答えになります。

ここで注意しておきたいのは「 人間はゲームがつまらなくなった段階でプレイをやめる 」という点です。
楽しいうちはいくらでも遊んでしまうんです。そのうち勝手に飽きて、勝手に面白くなくなって、勝手に評価が下がる。人間は厄介ですね。。。

というわけで、評価や満足度の高いゲームを作りたければ、「 最高のタイミングでゲームを終わらせる 」必要が出てきます。

実績の話に戻ります

なんでこういう話をしたかというと、実績の持つ「目標」というシステムは プレイヤーがゲームをプレイし終わるタイミングを決める 役割を持っているからです。

ここで一つ、2パターンのゲームに対して実績という「大量の小目標」を加えたケースについて考えてみましょう。

RPGのように「ラスボスを倒す」という大きな目標が用意されているゲームの場合

このようなゲームは一度きりのプレイ体験を極力濃いものにすることでプレイヤーの満足度を高めるタイプのゲームになるので、 用意できる実績の解除条件は、「ダンジョンを50個クリア」「レベル50到達」「所持金100000ゴールド到達」などのゲームを通じた目標になりがちです。
ちなみに今てきとうに Skyrim の実績リストを見て書きました。

いくつかの実績を解除しながら普通にゲームを続け、いよいよラスボスを倒してゲームクリア!!……しかし実績はまだまだ残っています。 大きな目標を達成した後になって小さな目標を与えられても、それを超えるような達成感が得られるとは到底思えないので、大抵のプレイヤーはそれを無視してしまうでしょう。
むしろ、一部の完璧主義なプレイヤーは「すべての目標を達成しないと気が済まない」と考え、新しい体験のないプレイを延々と続けることになってしまいます。

ゲームのクリアがはっきりとしたゲームにおいて実績による過剰な目標があると、 「ゲームを終わるべき最高のタイミング」がズレてしまう という問題が発生するんですね。

ローグライクのように「何度も繰り返し遊ぶことが楽しい」クリア自体が小さな目標であるゲームの場合

このようなゲームは「何度やっても違うプレイ感で新しい体験が得られる」という点でプレイヤーの満足度を高める性質を持つため、 実績の解除条件は「〇〇を使わずにステージクリア」とか「1プレイ中に〇〇を10回行う」のような、1プレイを通じた目標が多くなります。

何度か挑戦しながら、ゲームを初めてクリア!!……しかし実績はまだまだ残っています。
しかし次のプレイではまた新しい体験が得られるとわかっているので、その上で実績による小さな目標が用意されていると、「次のプレイではこの実績を達成してみるか」のように、次のプレイをさらに促進することができます。
繰り返し遊べるゲームを何度もやっていると、まだゲームのコンテンツは残っているのにも関わらずプレイヤーが先に飽きてきてしまいますが、それとは別軸のモチベーションを用意することができるのです。

ゲームのコンテンツに全て満足するまでプレイヤーのモチベーションを保ち続けるような小目標を設定することで、 「ゲームに最大限満足した最高のタイミング」でプレイを終わらせることができる というメリットが発生します。

つまりはどうすればいいの?

「実績機能を用意すべきかはゲーム体験のタイプによって大きく異なるので、よく考えよう!」

ということです。

もちろんクリアがあるゲームは全て実績が合わないわけではなく、うまいこと合わせるやり方はいくらでも考えられます。

例えばオープンワールドのように「冒険することが楽しい」ようなゲームはストーリー上の大きな目標がありつつも他に面白さを提供する要素があるので、そういった部分に絡む実績(例えば普通のプレイヤーが行かないような未開の土地に行く実績など)は好まれやすいと思います。

また、その実績とゲーム内のコンテンツが連動っせ、実績解除=サブクエスト達成=プレイヤーが欲しがる報酬が得られる、というようにして実績解除のモチベーションを高めることも可能です。

一方、繰り返し遊べるゲームの実績はどれも「頑張れば一度のプレイで達成できるかも…?」というぐらいの難易度に設定しておく必要があります。 よくあるパターンですが、Risk of RainFTL: Faster Than Light のように「実績解除によってゲーム内の新しいコンテンツがアンロックされる」形式は、「繰り返しプレイする」という部分に新しい要素を加え続けることができるので相性がよいですね。

「実績を解除するモチベーションをゲーム内にも用意しておく」、というのはどのようなゲームにおいても有効な手段に成り得ます。

それでは皆様、よき実績解除ライフを!