快楽思考回路

おもしろさについて考えます。

【フリゲレビュー】天使心母

天使心母 というゲームがめちゃめちゃ面白かったので紹介させてくれ!

http://muspell.raindrop.jp/game/lamiel/index.htm

剣。盾。鎧。アクセサリー。属性。状態異常。

ボス狩り。レア狩り。育成。アイテム収集。やりこみプレイ。

スキル振り。図鑑埋め。実績解除。攻略wiki。裏ボス討伐。

繰り返すその人生の行き止まりのひとつが、きっとこんな形をしていて――

私はそこにいる。

どんなゲーム?

うきうきハック&スラッシュ

基本システムは「4人パーティで塔(ラダー)を登っていくRPG」という一般的なもの。Space not farのゲームは「ノンフィールドRPG *1 」というシステムをよく採用しており、一定回数の連続戦闘を勝ち抜くと次の階に登っていく。主人公を除くパーティは12人 *2 の中から割りと自由に *3 編成を組むことができる上に、後述する主人公の能力も相まって様々なパーティ編成を楽しむことができる。

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▲ノンフィールドRPGといいつつダンジョン選択画面はフィールドマップ。最初は1階からだが、次第に上の階に行けるようになるぞ。各階に出てくる発見済みの敵情報が地味に嬉しい

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▲ダンジョン内の様子。右上に現在の地点が表示されている。例えばこの画像なら4Fで、5回戦闘するうちの1回を終えたところ。全滅すると道中で得た戦利品が消えてしまうので、ヤバいときはそそくさと帰還だ

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▲拠点に戻ると仲間たちが寛いでいる。アイテム交換や強化、作製をしてくれる仲間もいるぞ

仲間はどれも個性的で、HPが満タンのときにやたら強い「勇者」やMPの代わりにHPで技が使える妖精「リゼ」、とにかく猛毒を撒くことに特化した「マツリ」など、使い所が難しいキャラが盛りだくさん*4。それでもバランス調整はしっかりできており、適当にお気に入りのキャラを3人連れて行ってもクリアできる(はず、試してないけど)。

なにが面白いの?

全部!

…と言いたいところですがそれだとレビューにならないので、各要素について述べていきます。

ガチャ

ジャンルでは「ハック&スラッシュ*5となっていますが、このゲームではレア装備をガチャで引きます。今風ですね!敵がドロップする鍵を使ってランダムなアイテムが1つ手に入ります。ちなみに確定で装備が出る10連ガチャも!そして時折、通常装備よりちょっと強いレア装備(((めちゃ強いSSR装備とかはないのでリセマラはしなくても大丈夫ですしイライラしながらガチャを回すこともない安心設計))が出たりします。やはりガチャの抽選はどんなゲームでもプリミティブな欲求が引き起こされて楽しいです。普通のハクスラのように狙った装備を目指して同じ敵を延々と倒していくのはどうしても途中で飽きやダレが発生しますが、このゲームのガチャ素材となる鍵は多くのアイテムが共通してドロップするので「普通に攻略していればいつの間にか溜まっている」という感覚でガチャが引けるのもグッドです。

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▲ガチャガチャ。ラダーを登ってくと鍵が鉄>銀>金とランクアップしていき、より強いアイテムが出てくるようになる

強化

ガチャといえばダブり、ダブりといえば合成強化システム!というわけで多くのソシャゲよろしく、合成強化システムも踏襲しています。同じ装備を2つ合わせることでプラスの数字を増やしていくことができます。これのおかげで「うわ~、またダガー引いちゃったよ。いらないアイテムがどんどん増えていく~」みたいなことにはなりません。最高ランクの装備を作るには同じ装備が1024個必要なので、どんな雑魚装備でもどれだけあっても全然足りない!!*6 強化値がしょっぱいのが玉に瑕ですが、レア武器の価値を守るためにそこはご愛嬌。

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▲強化。+10まで行くと強さが一気に跳ね上がるって噂を聞いたんですけど本当ですか?

作製

RPGではおなじみの作製システムも完備!ガチャと違って狙ったアイテムが手に入るので、現在苦戦している敵にうってつけの装備をダイレクトで入手することができます。装備が完全ランダムドロップだとマジで辛いですからね*7。「強敵を倒したい」「そのために特定の装備を作りたい」「そのために素材を落とす雑魚を倒す」というサイクルがとても分かりやすく、常に目標が見えているのでモチベを保ちやすいのが素晴らしいですね。

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▲炎属性のダンジョンにはこれ!ということで3つ作ったけど、当時のパーティはメイジー(メイド服しか着れない)とリズ(防具装備できない)がいたので2つしか使わなかった思い出の一品。

戦闘バランス

このゲームではハードコアな初見殺し敵がどんどん出てきます。しかし初見殺しと言うものは得てして対策を積めばただの雑魚、「この敵はどうやれば倒せるか」というのを考えるのはこのゲームの最大の醍醐味といえるでしょう。パズルを解きながら進んでいくような感覚はゲーム終盤まで戦闘の気持ちよさを提供します。状態異常を扱う敵にはそれを無力化する装備を。属性防御が高い敵には一番よく通る武器を*8。強力な全体攻撃には味方をかばう技能を*9。尖った性能の敵を倒すために尖った性能の味方に尖った性能の装備を用意して挑むのです。

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▲かなり考えるゲームなので、戦闘中にも様々な情報が閲覧できるようになってます。物理攻撃に強いストーンデビルの弱点も丸見え!

スナッチ

敵に応じたパーティの構成を考えることがこのゲームの肝、ということを表す最大の象徴が「スナッチ」システム。主人公だけが持つ能力で、HPの減った敵の身体を奪うこと、その敵に応じてステータスや技を変化させることができます。多くの味方はアタッカーやタンク、援護などの役割が決まっていますが、主人公はスナッチした敵によってどんな役割でもこなすことができるのです。スナッチした敵は装備の形で表され、一度スナッチすればいつでも装備しなおすことができる親切設計。大抵の敵は ー特性ー と呼ばれるユニークな特殊能力を持っているので、主人公はどのような役割にもなれると言いつつ「主人公しかできない仕事」をしてもらうこともしばしば。新しい敵に会うたびに主人公の可能性が広がっていく成長感は他RPGではなかなか味わえません。もちろんボスもスナッチできますよ*10

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▲情報ページからも詳細を閲覧できますが、自分は手元のエクセルに全部メモりました

ステータスアップアイテム

このゲームむずい!敵の倒し方わからん!とお悩みのあなたにも、もちろん救済措置が用意されています。イージーモードで始めてもいいですが、フタモリ先生のところで交換できるステータスアップアイテムもその一種。一番低級のガチャで出るゴミみたいなアイテムを大量に回収しつつ永続ステータスに変換してくれます。ゲーム終盤でもこのような形で低級ガチャの価値をしっかりと用意してくれるシステムは美しい。でもゲームが進むたびに必要なアイテムの数はどんどん増えていくため全ステータスを最高 *11 にするのは果てしない時間がかかりそうです。ご利用は計画的に。

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▲保健の先生が生徒に酒くれちゃっていいの!?

EXエネミー

ある程度ゲームが進むと、ダスト *12 稼ぎやステアップアイテム交換のために低階層を延々と歩き始めることがあるかもしれません。ずーっと同じボタンを押し続けるのはダルい…そんな退屈な思いはさせません。極稀に突如としてEXエネミーと呼ばれる強敵が現れます。これがまたなかなか尖った構成で、稼ぎ用の装備で下手に戦うと全然歯が立ちません。しかし倒せばレアアイテムがもらえたりするので、大量のアイテムを抱えた状態でついつい戦ってしまうのです*13。クソー、次は倒す!!

ネタバレが激しいので画像はナシ!

実績

普通、実績システムと言えばコンテンツ嵩増しだったり解除のダルいものがあったりとあまりいい印象がありませんが、このゲームでは「ごほうびチェスト」という名称で、特定の条件を満たすとアイテムやダスト(お金や経験値みたいな概念)がもらえるようになっています。へんなことをしないと達成できないものはほとんどなく、普通にプレイしていればほとんど回収できるでしょう*14。自分がこのブログで過去に書いた実績機能に関する記事ではエンドコンテンツとしての役割を話したのですが、天使心母ではあくまで「短期的な目標とささやかな報酬」に徹しており、存在感はあれどストレスにならない最高のポジションに位置しています。

pleasure-circuit.hatenablog.com

ユーザーエクスペリエンス

Space not farの作品全般に言えることなんですが、とにかくUXがいいんですよ。拠点に戻ってきたときに真っ先に行くであろうガチャを回せる勇者やアイテム作製できるメイジーのところには、上キーを押しっぱにするだけで到達できます。自動戦闘で延々とアイテムを回収しているときも、戦闘継続も自動戦闘も右キーだけで選択できたり*15、ダンジョン選択マップでは全てのダンジョンに1回曲がるだけで到達できたり。余計な入力のロスが極限まで減らされていて、細かい所の気配りを感じます。不要なストレスを完全になくすために「ユーザーは何をしたいか」についてしっかりと考えられている印象です。

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▲一番お世話になる2人のところに一番行きやすい。ごほうびチェストも経路上にあるし。

情報ページ

親切心はUXのみならず、メニュー内にある情報ページにも盛り沢山。一度でも遭遇した敵は能力値や使用技などが閲覧できるようになるので、強敵に何度もぶつかって調査して…といった余計な手間を挟まずにじっくりと醍醐味であるパーティの構成の検討にのめり込むことができます。アイテムの抽選確率*16もばっちり明記で消費者にも優しい。また、アイテム図鑑の方からも「このアイテムは誰が落とすか」が閲覧できたり、技能図鑑では技能を使える味方や使ってくる敵が表示されたりするのが地味に便利だったりします。

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▲アイテム収集率まで見えてしまう。ごほうびチェストの実績は200個までで終わりですが、こういうのあるとやっぱり全部集めたくなるよね

フレーバー

そうそう、情報ページではアイテムや武器のフレーバーテキストや敵キャラの余談も見ることができます。これがまた小ネタの宝庫で、テレビゲームフリーゲームTRPGTCGに定期更新ゲームまで様々なジャンルのゲームからネタが集められています*17。ゲーム好きなあなたなら、ある程度は分かるネタがあるはず。

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フレーバーテキストが一つひとつ細かい!これ254も考えるのめちゃ大変ですよね

売り方

こんなに素晴らしいこのゲーム、な、ななななんと、 無料で遊べちゃうんです! やべぇ!!このゲームをクリアして満足しきったあなたには、この「天使心母補遺」を購入する権利があります。補遺は各キャラクターの裏話やアイテムのネタ元など、このゲームを更に楽しむための情報が盛り沢山!これは個人的な感覚ですが、その人がどれだけいいものを作っていても「無償の寄付」って精神的にしづらいんですよね。しかしなにか対価があれば「ゲームも楽しませてもらったし、裏話を読むためにリアルソシャゲガチャ1回分の課金はしておきたいな」という気分になりやすいのです。これを読むために、まずはクリアしましょう。

muspell.booth.pm

▲このBOOTHというサイトでは別に価格以上の金額を払ってもいいよ?というシステムも用意されています。君が楽しんだ分だけの額を入れてくれ!

まとめ

  • 天使心母をオススメしたい人
    • 強敵に打ち勝ったときの快感がたまらない
    • 敵の弱点を研究して見つけ出すのが大好き
    • 俺だけの最強構成を作りたい
    • 進むか戻るかのスリルを味わいたい
    • ただでガチャガチャ回したい
    • まずは無料で遊んでみたい
  • 天使心母をオススメしない人
    • 何も考えず敵を蹂躙したい
    • ガチャという言葉にめちゃくちゃ嫌悪感がある
    • パソコンを持ってない
    • 時間がない*18

やろう!天使心母!!!

*1:自由に移動できるマップがない代わりに「前に進むか撤退するか」を選択し、一定歩数を進むことで次のステージに行けるシステム。どんどん減っていくHPの中でステージを踏破しきれるか、それとも戻るべきかのジレンマが楽しい!ステージの最後ではボスが出たりする。アンディー・メンテステッパーズ・ストップなどのゲームにもよく見られるので天使心母が気に入ったら是非!

*2:ヒントページを見ればわかるけど隠しキャラアリ

*3:各キャラにコストが設定されており、パーティコストを超えるような編成は組むことができない。でも最終的には全員入れれるようになるから気にしなくて大丈夫だよ

*4:もっとわかりやすいキャラもたくさんいます!

*5:一般的に「敵を倒してレア装備手に入れてもっと強い敵を倒してもっと強いレア装備を手に入れて…」を繰り返す系のゲーム、という認識

*6:自分はクリア時で一番ランク高かったのが+6なので64個ぐらい集めた計算になります。1024個とか無理じゃね…?

*7:とはいえ序盤に作れるものは装飾品だけですが。銃専用技や家庭用品専用技がなかなか使えない!

*8:このゲームでは物理も魔法も3属性ずつあります。多すぎず少なすぎず。属性を上乗せする技もあるのでパーティ構成で詰むこともあまりありません

*9:さざれの安心感は半端ないですね

*10:スナッチ時は敵を即死させれるので、ボスによっては「うわ、倒しきれなかった!もうスナッチに賭けるしかない!」みたいな状況でゴリ押したりすることも

*11:5種類のステータスごとに10回ずつまでしか増加させられません。何個使えばいいんだろう…という悩みもご無用

*12:お金や経験値のような概念

*13:もちろん負けて全てを失うまでがテンプレ

*14:全滅だけはなかなか回収できませんでしたが、報酬も事前に教えてもらえるため「わざわざ時間をかけてまでやる必要はない」ということが分かるので安心して放置しています

*15:そしてうっかりEXエネミーにぶつかってアッッ死んだ

*16:ドロップ率のことです

*17:最初に持ってる装備がトイナイフですからね。ママ…!!

*18:公称プレイ時間15時間らしいですが僕は4,50時間どっぷり遊んでしまいました