快楽思考回路

おもしろさについて考えます。

アクションゲームの2つの軸について

アクションゲームが苦手な人の話

僕はアクションゲームがとても苦手です。

少なくとも、自ら望んでプレイしようと思わない程度には、俗に言う「アクションゲーム」と呼ばれるものが苦手です。

でもSplatoonは楽しいのでプレイします!

ここでクイズ!なぜ私はアクションゲームが苦手なのにSplatoonを楽しんでいるのでしょうか??

まぁあのゲームはアートワークも音楽もいいしインクの質感もいいしリプレイ性も高いしバランス調整もそこそこ頑張ってるし捨てるとこはハード以外ないんですが、そういうところを全て除いても「 アクションゲームとして万人受けするシステムが構築されている 」からなんですね。

そもそもアクションゲームとは

アクションゲームと言えば、何を思い浮かべますか?

  • マリオみたいな 2D/3D世界を進んでいくゲーム
  • アクションRPGとかオープンワールドとかステルスアクションとか
  • 格ゲーもいわゆる「対戦格闘アクション」
  • FPSもかなりアクションしてる

まぁ、キャラを行動(アクション)させれば全部アクションゲームですよね。

2D/3Dとかジャンプダッシュとか視点が1人称か3人称かとかいろんな要素がありますが、これらすべてに共通しているのは「 リアルタイム性 」です。
どれだけキャラを自由に動かしても、 ファイアーエムブレムのようなターンベースのゲームはアクションゲームとは言えないわけですし。

そう考えると、以下のようなものもアクション(とは言いづらいがリアルタイム要素を持っている)ゲームと考えることができます。

このように、リアルタイム性を持ったゲームは多岐に渡ります。
そして、「格ゲーは苦手だけど音ゲーは得意」とか「FPSには興味ないけどRTSはよくプレイする」とかいう人は必ず存在しているわけです。

このリアルタイムなゲームたちは、いったいなにが違うというのでしょうか?

ゲームにおける「操作」のプロセス

先程の謎には、人間がビデオゲームをプレイするときの「操作」のプロセスが大きく関わってきます。

  • ビデオゲームで遊ぶ時には、必ず「画面」や「音」などのインプットを受けとります
  • そのインプットに対してどう操作すればいいかを「脳」が判断します
  • その判断結果によって「指」が動き、「コントローラ」を操作します
  • コントローラからの入力をゲームの「プログラム」が受信します
  • プログラムが入力を処理し、また画面や音としてプレイヤーに返されます

なんかすごい当たり前の事を言ってますが、ここで伝えたいのはゲームの操作が「 とても多くのプロセスの繰り返し 」によって構成されているということです。

しかも、アクションゲームではこれを休む間もなく続けなければなりません。とても大変!!いつかはミスをしてしまうことでしょう。

  • 画面の見間違い
  • 思考時間の少なさによる判断ミス
  • とっさの操作のミス
  • 自分の操作がゲームに及ぼす影響の見積もり誤り

だからこそ、ミスなく手順をこなせたときに達成感があるし、熟達によってミスを減らしていく成長感があるわけです。

以上より、アクションゲームは「 リアルタイムな操作と判断が多層化されること 」で難易度を産み出していると考えられます。

すなわち、アクションゲームの本質は「 操作精度と判断速度 」と言えるでしょう。

アクションゲームの1つめの軸

リアルタイム性のないゲームでも操作判断の多層化の枠組は同じなのですが、別に操作精度や判断速度が求められているわけではありません。

思考時間がどれだけあってもミスすることはありますが、操作を行った段階ではそれが最善だと判断しているので、これは「 思考深度の難易度 」となります。
(これらは同じく「判断」という言葉でくくられがちなので注意すべきです)

アクションゲームが好きな人は、素早い操作判断をこなす(こなせるように成長できる)ことを楽しいと感じます。
一方、アクションゲームが嫌いな人は、素早い操作判断によってミスが発生することを嫌う完璧主義者なタイプが多いです。

逆を言えばアクション嫌いでも、操作や判断に十分な時間が与えられればリアルタイム性のあるゲームをストレスなく遊べるわけです。
例えば多くのタワーディフェンスにおいて敵の侵攻はリアルタイムに進行しますが、「一時停止」の機能によって操作精度・判断速度の問題に対応しています。

というわけで、「 どれほど早い操作・判断を要求するか? 」は、アクションゲームの大きな軸の一つなのです。

ゲームを算数の問題に例えてみよう

一桁の足し算を解くのは簡単です。ゲームとしては簡単すぎて達成感がないので、もっと難しくしてみましょう。

例えば「1分間で100問こなす」という制限を加えると、1問くらいは計算ミスしてしまうかもしれません。
1問に必要な時間が少なくなればなるほど、すべてを正確に解くのは難しくなります。これが先ほどのアクションゲームです。

また、「5桁の掛け算」に問題を変えれば、どれだけ時間があってもどこかで計算ミスをしてしまうかもしれません。 問題自体を難しくするアプローチは、リアルタイム性のないゲームに当てはまります。

この二つの変更を同時に加えたらどうなるでしょうか?「1分間で2桁の掛け算を10問」とか。

これが、2つめの軸です。

アクションゲームの2つめの軸

一口にアクションゲームといっても、その複雑性は様々です。

弾幕シューティングはとても高難易度なゲームが多い印象ですが、実はそのシステムに複雑性はほとんどありません。

FPSみたいに、視覚外から撃たれることはありません。敵から飛んでくる弾は全て画面上に見えています(速すぎて見えないときもありますが)。

格ゲーみたいに、対戦相手がこちらの動きを学んで行動を変えてくることはありません。同じ敵からは同じようなパターンの動きをする弾が飛んできます(ランダム挙動のときもありますが)。

多くのアクションゲームみたいに、重力もなければ慣性も物理演算もありません。移動レバーを倒せば倒しただけの動きしかしません(慣性あるゲームもないわけではないですが)。

対戦相手との読み合い、画面外の情報の推論、将来的な挙動の予測。
これらはただプレイを続ければ慣れるようなものではなく、「素早い操作判断」とはまた別軸の難しさを有しています。

このような、「 限られた時間内でどれだけ複雑な判断ができるか? 」が、アクションゲームの2つめの軸になります。

音ゲーはこれの最たる例で、「見えたまんまに押せばいい」だけなので「リアルタイムな操作が正しくできるか」というだけのゲームにです。
1つめの軸(素早さ)については高レベルなスキルが要求されますが、2つめの軸(複雑さ)としてはこれほど簡単なゲームはありません。
個人的な感覚ですが、アクションゲームと音ゲーで好き嫌いの相関はほとんど見られないのではないでしょうか?

多くの人に受け入れられるアクションゲームとは

アクションゲームと一言に言っても、「この2つの軸のどちらの話をしているのか」という認識が一致していないとディスコミュニケーションが発生してしまいがちです。

例えば自分はアクションゲームが苦手ですが、読み合いなどの複雑な判断が苦手なだけで、単調な動作を素早く行うのはそこそこ得意です。

ここで冒頭の問い。

なぜ私はアクションゲームが苦手なのにSplatoonを楽しんでいるのでしょうか??

Splatoonは3分間という限られた時間内で激しい撃ち合いが発生する「2つめの軸」が強いゲームではあります。
しかしこのゲームの目的は撃ち合いではなく「どれだけたくさんの床を塗れるか」というものです。

そこだけを切り取れば、相手プレイヤーの動きに狙いを定める必要も、攻撃を避ける必要もなく、自分のインクは狙った通りに床を染め上げていきます。

まぁ重力慣性や視覚外情報などの要素は残っているのですが、重要度が非常に高いというわけでもありません(マリオみたいに慣性をコントロールしないとクリアできないようなことはない)。

例えば自分は撃ち合いが絶望的に下手ですが、「どこを塗っておけば味方が有利に立ち回れるか?敵が不利になるか?」というサポート・牽制の役に回ることで、そこそこチームに貢献できるのです。

もちろんこのゲームはガンガン攻めるプレイだって可能です。
でもそうしなければ楽しめないのではなく、小さな子供が敵に目もくれず床を塗り回るだけでも十分楽しむことができます。

人によってプレイスタイルが切り替えられる、そしてそれによって要求されるアクション性が変化する。
このような要素が、Splatoonが多くの人に受け入れられた一因となっています。

つまりはどうすればいいの?

アクションゲームのそれぞれの軸がどれほど強いのか?システムやプレイスタイルによって各軸の幅を広げることができるか?を気にしておこう!!

ということです。

他のゲームを例にあげると、Risk of Rain は普通の2Dローグライクアクションですが、このゲームにはLoaderというキャラがいます。
このキャラは無敵スキルの時間がかなり長く、ある程度アイテムを揃えるとほぼほぼ無敵状態を作り上げることができます(それまでが大変だけど)。

普通に敵を倒していくアクションは複雑な要素を多く含むことが多いですが、ここに「無敵」という要素を加えるだけで複雑さを抑え、「どのようにして無敵状態を継続可能にできるか?」という別のゲームに変化させることができます。

アプローチは星の数ほどあると思います。PONGだってマリオだってアクションゲームだけど爆発的にヒットしてます。
みんなが楽しめるアクションゲームは、この先もまだまだ増えていくはずです。

それでは皆様、よきアクションゲームライフを!